射楯兵主神社(いだてひょうず)
姫路市総社本町190 its-mo


鳥居


交通案内
JR山陽本線姫路から北へ15分、姫路城大手門の東

祭神
東殿 射楯大神(五十猛命)
中殿 空
西殿 兵主大神(大己貴命)
摂社 一の宮「兵主神荒魂」
摂社 二の宮「射楯神荒魂」
摂社 柿本社「柿本人麿」ほか

鳥居

神門

由緒
 播磨国の総社である。兵主神に射楯神を合祀し、また播磨国174座を一括して合祀している。 国司が赴任すると地元の神にお参りする慣わしであり、これは大変な労力と財政的負担であった。 逆に地域の神社をまとめて総社として、負担を軽くしたのである。いにしえの行財政改革である。
 「播磨国風土記」餝磨郡因達里の条に”因達”の説明として、息長帯比売命が韓国を平定しようと渡海された時、「御船前(みふねさき)<先導神>の伊太の神がここにおいでになる。よって神の名を里の名にした」とある。 『風土記』の伊和里の条に「因達の神山」の名もあり、八丈岩山とされている。此処にはかって高丘(たかみくら)神社が鎮座していた石碑がある。射楯神の痕跡は見えない。

 鎌谷木三次氏は因達里を因達北条と見て、楯楯神を航海の安全を司る住吉系の神とし、また市川の河口に近い阿成(あなせ)を大和穴師の兵主神社の神戸の地と比定し、そこへ穴師坐兵主神社が勧請されたとして、因達南条としている。 この因達南条の南側に現在は「大己貴命」を祭神としている早川神社「兵主神」が鎮座している。
 一方、北条の場所であるが南条の北に接してその地名が残っているが、射楯神に関連しそうな神社は存在していない。

 社記によれば、射楯神は欽明天皇二十五年に伊和里の水尾山(姫路市山野井町)に祀られたが、延暦六(787)年に坂上田村麿によって兵主神を小野江に遷し、後に射楯神を合祀したのが創祀とする。

  年表形式(社のしおりから)
大和時代 射楯大神 飾磨郡因達里に御鎮座(播磨風土記)八丈岩山とされる。
大和時代 兵主大神 欽明天皇二十五年(562年)飾磨郡伊和里に影向
奈良時代 天平宝字八年(764年)藤原貞国、兵主大神を水尾山に崇祠
奈良時代 延暦六年(787年)兵主大神を国衛小野江の梛本の遷座
奈良平安 射楯大神を梛本に遷し合せ祀り射楯兵主神社と号す
平安末期 安徳天皇養和元年(1181年)国内16郡の大小明神174座を合せ祀り播磨国総社と称さる
安土桃山 天正九年(1581年)羽柴秀吉、総社を現社地に遷す。


 陸奥国色麻郡四釜郷の伊達神社は、当社からの勧請である。イタテの名を持つ式内社は他には出雲の韓国伊太神社三座、播磨国揖保郡の中臣印達神社、丹波国桑田郡に伊達神社、紀伊国名草郡に伊達神社、伊豆国賀茂郡に伊大和気神社と十二社が鎮座している。

 日本の神々の神格を一つに決めてしまうのは至難の業だが、 吉野裕氏は「東洋文庫の風土記」の中で「松岡静雄氏:海人族の祀った神。松村武雄氏:射立ての意で山の狩猟者の行為との関係説。」を紹介され、ご自身は斎楯の神として水軍の祀った神とされている。 また、志賀剛氏は「湯立て」神、石塚尊俊氏は「射立」で「矢になって降臨された神」とされる。

社殿

お姿
 本殿は東に射楯大神、西に兵主大神を祀り、二間社流れ造りの形式である。建物も美しい神社である。

本殿後ろの十二号殿社(右端が柿本社)

お祭

 夏祭  7月10,11日 夏祭 
 姫路祭 11月14−16日
 特殊神事 一つ山祭  61年目
      三つ山祭  21年目

参考文献 日本の神々2(浅田芳朗)白水社
*2 古代の鉄と神々(真弓常忠)学生社

「兵主神」と「道教」との関係

 兵主神は秦氏によって日本に持ち込まれたと思われる。山東半島の近くの琅邪(ろうや)に八神が祀られている。

天主は天の神、地主は地の神、兵主は武器の神、陰主と陽主は陰陽を知る神、月主は月の神、日主は太陽の神、四時主は四季の神とされる。 兵主は「蚩尤:シユウ」という名を持つ。貝塚茂樹氏は「風を支配してきた蚩尤は、またふいご技術によって青銅兵器の製造を行った部族の代表者であり、この技術の発明者であり、古代においては神秘的なふいごの用法、青銅器鋳造の秘密を知っている巫師の祖先と仰がれる人物であった。 (『中国神話の起源』)。

 琅邪八神が道教の神かどうかは実際の所よくわからないが、山東半島の導士たちの信仰の対象であった。 剣に宗教的な意味をもたせるのは道教であり、剣の初めは蚩尤によるとの伝承がある。

 射楯兵主神社の一つ山祭には、青、黄、赤、白、紫の布で「置山」を巻く。「五色山」というが、五色は道教が儒教から借りてきた考え方とも言う。
 なお、道教の五色は紫のところが黒である。

        以上参考−『日本史を彩る道教の謎』から−
 



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