紀伊續風土記 巻之二十三 海部郡 加太荘 加太村から
○春日神社 境内周六十間
本 社
天照大神
祀 神 春日明神
住吉明神
廳 二間 八間 鳥居二基
末社二社 稲荷社 八王子社
村中馬塲町にあり 粟島社の摂社にして一村の産土神なり 村民相傳ふ 此地創造の時當社を勧請すといふ 按するに其初天照大神一座を祀り奉り後に住吉春日兩社を合せ祀りしなり 國造家舊記曰道根命奉戴二種之神寶到于紀伊國名草郡加太浦云云 當社は即其頓宮の址なるへし 住吉社は中世に合せ祀りしや 文保元年の文書に住吉社寄進状あり向井家蔵 又春日神社は藤原姓の人此地を領せし故日野左衛門藤原光福といふ人なりといふ 詳に日野村の條に見ゆ 其祖神を合せ祭りしといふ 向井家蔵る所の文書に嘉吉二年春日社御神事日記あり 又享禄三年の日記に春日社の神巫粟島社へ年中出仕の事見えたり 地頭の祖神にして新に祀りし故に春日社を以て總名となし唱へ來れるなり 神主なく巫女ありて社に奉仕す 村老十人年預を定社事を掌り神事は淡島神主執り行ふ 四月廿日とす 此日神供及村中飲讌に皆龍蝦(ヱビ)を用ふ 土俗因て海老祭といふ 祭りの日村老皆素□(示篇に奥)を着し廳に集りて坐をなし献酬の禮なと總て古風あり
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