坂本神社
和歌山県岩出市西坂本1764 mapfan

鳥居

交通案内
JR和歌山線岩出駅 根来寺西1km

祭神
素盞嗚命、罔象女命、埴山姫命、天疎向津姫命、氣長足姫命、譽田別命、 天兒屋根命、市杵嶋姫命、屋船句久智命、手置帆負命、彦狹知命、天太玉命、事代主命、大己貴命、倉稻魂命

摂社 水神神社「住持ヶ池の水神」、八幡神社

由緒
 創立年代は不詳。元今宮大明神社と称された。 西側に住持ヶ池(住蛇ヶ池)があり、民話が残っている。

 根来地区の御船明神社、山宮大明神社等の神社を合祀しているので、祭神が多い。


流造の本殿



お姿
  本殿は昭和六十一年に改築された。 台湾檜を用いている。社殿に安置されている狛犬は全て土瓦製であるのは当地は粘土の産地であるからと云う。 彩色されていたようだ。また祭神に埴山姫命の名が見えるのもこれ故と云う。

 住地ヶ池の木々群を取り込んで大きい社叢の神社である。
住地ヶ池には島があり、一見古墳を思わせる。


住地ヶ池



お祭り
9月 第3日曜日 1日間 例祭 [通称]秋祭り


紀伊續風土記 巻之二十八 那賀郡 弘田荘 西坂本村から

○今宮大明神社  境内除地
村の西住持ヶ池の側にあり 村中西側の人家の産土神とす 神主を藤本氏という。

○御船明神社  境内除地
村中にあり 村の東側の人家の産土神なり 祀神荒川荘神田御船明神と同神にて天照大御神の御船に御し給ふ御魂を祭れるなりとそ。

○山宮大明神社 境内除地
    荒田今宮御船の三社を合せ祀る 山に在すを以て山宮大明神と呼来れり 古は神職の者あり 今は村中誠證寺支配すといふ

○小社二社
    白山権現  境内除地  村の西にあり   蛭子社  同  村中にあり
 
 



住蛇ヵ池の話  (荊木淳己氏著「日本の民話 紀の国篇」(燃焼社)から)

 岩出町の北、約四`のあたりに新義真言宗の総本山・根来寺があるわな。
 その西らに大きな池があって、いまも満々と水をたたえてるんやが、それが住蛇ヵ池や。
 むかしむかしのことにな、村随一の旧家で室家右兵衛ちゅう人が住んでたんや。
 この人には、「かつら」という一人娘があったんやと。幼い時に母を亡くして、それからずっと乳母のお豊の手で育てられてきたんやけど、そらもう色白で、やっと十六の春を迎えたばかりやいうのに”根来小町”の評判も高うて、あちこちから降るほど縁談もあったんやと。
 ところが、この「かつら」には、人にも云えやん悩みがあったんやしょ。
 実はえらいちぢれ毛で、なんぼ椿油をつけてもどうもならんねや。
 そやけど、不思議にも、住蛇ヵ池の水つけて梳いたらスルスルと琉けるんやしょ。
 そいでお豊さんは毎日、手桶一ばいの水を汲みに行ってたんやと。
 やがて和泉の国の大原源蔵というお持との縁談がまとまり、お嫁に行くことになった。
 五月晴れの縁がしたたるような気持ちの良い朝、「かつら」の輿を先頭に、たくさんの荷物を担いだ行列は、根来の里を後にして、丁度、住蛇ヵ池のはとりにさしかかった時のことや。
 一天にわかにかき曇って、横なぐりのはげしい風が吹きつけ、大粒の雨が落ちてきたんやしょ。
 はげしく雷は鳴るし、行列の人たちはオロオロしてるばかりやった。
 はんの暫くの間やったけど、雨があがって見ると、肝心の花嫁の「かつら」がどこにも見当たらんねや。
 大騒ぎになって、室屋右兵衛は大勢の人を集めて、山の奥の方までくまなく調べさしたんやけど、かいもく行方はわからんねや。
 みんなは途方にくれてしもうた。
 けどお豊さんにはふと思い当たることがあったんや。
 (あのちぢれ毛が池の水をつけたら、とたんにスルスルと梳けるのはなんといっても不思議すぎる、ひょっとすると池の主に魅入られたんかわからん…)と。
 その晩、池の傍でお豊さんが「もう一遍だけかつらさんに会わしてよう」とお祈りすると、大蛇の頭の上に乗った花嫁姿の「かつら」が姿を見せたんやと。
 いまでもこの池のはたへ行くとぞ〜っとするで。

 
 

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