万葉集巻第十二 紀の国

物に寄せて思ひを陳[の]ぶ

3009 橡之 衣解洗 又打山 古人尓者 猶不如家利
つるばみの衣解き洗ひ真土山本つ人には猶しかずけり
橡の普段着 はづしてあろて またうってんのよ 真土山 ふるいなじみは いちばんええわ
紀ノ川沿い
 

3037 殺目山 徃反道之 朝霞 髣髴谷八 妹尓不相牟
殺目山きりめやま行き交ふ道の朝霞ほのかにだにや妹に逢はざらむ
切目山通おって いききする道に あけに霞出らいしょ もやーとでもええんや あのこ でてこんか
 

3072 
大崎の荒磯の渡わたり延ふ葛くずの行方もなくや恋ひ渡りなむ
 

羇旅[たび]に思ひを發[の]ぶ

3154 乞吾駒 早去欲 亦打山 将待妹乎 去而速見牟
いで吾あが駒早く行きこそ真土山待つらむ妹を行きて早見む
さあ あが馬 はよいこら 真土山 待ってくれちゃある あのこ はよおおたろ
 

3168 衣袖之 真若之浦之 愛子地 間無時無 吾戀钁
衣手の真若の浦の真砂地まなごつち間なく時なし吾が恋ふらくは
服についちゃある 和歌浦の 砂みたいやいしょ わいは いつれも どこれも ほれてんねいしょ
和歌山市和歌浦玉津島神社 

3172 浦廻榜 熊野舟附 目頬志久 懸不思 月毛日毛無
浦廻榜ぐ熊野舟泊てめづらしく懸けて思はぬ月も日もなし
湾の中 漕いでる熊野舟 おもしゃいやろ そいやさか 気にかからいしょ あのこ おもわん 日ぃも月もないで
 

3175 若乃浦尓 袖左倍<沾>而 忘貝 拾杼妹者 不所忘尓
和歌の浦に袖さへ濡れて忘れ貝拾ひりへど妹は忘らえなくに
和歌浦で 袖まで 濡らして 忘れ貝 ひらうんやけど あのこのこと なんや わすれられんのお
或ル本ノ末ノ句云ク、忘れかねつも。 玉津島神社

万葉集巻第十三 紀の国

万葉集 紀の国

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