紀の国の神話と神々 樹木神 木種を播く神、木材を加工する神
木霊、木種を播く神、木材を加工する神
樹霊信仰は極めて古い信仰だと思われる。発展段階としては
木霊(コダマ)、ククノチ、葉守の信仰
樹霊は樹木の中に潜んでいて、時として抜け出して、人を魅入る、祟りをすると信じられた。 一本の樹木が枯れると精霊(スピリット)は霊鬼(デーモン)と化して、椰子の枝にとりつくとインドネシアのニアス島では言い伝わる。
山の反響を木霊の仕業とした。タンコロリン、見越入道、木ノ子童子、キタダサマ、天狗などの民話が残っている。
ククノチは、延喜式大殿祭の祝詞で、屋船久久遅命、これ樹霊なり。とある。
葉守の神は樹の神なり、よろづの物につかさどれる神なり。カシハの木に鎮まる。
山人、杣人の伐採儀礼
山の木を伐るときには一本だけ残す。これは木の樹霊の宿り木である。
トブサタデ儀礼とは、木を伐ったさい、梢を切り株の本に立てて山神に報いる。
徳島県三好郡三縄村では100年以上の樹齢の木を伐るさいには、枝を他の木に掛け渡し、木魂抜きをおこなう。
南天を植えて木霊を遷すことも行われる。
家屋・船の建造
樹木の霊を家屋の柱に遷し、それを家の神とする儀礼があった。
宮殿の祭柱、伊勢神宮の心の御柱も神霊の宿る所である。
山の神、木の神が船・航海の神になる。船玉信仰である。
素盞嗚尊、五十猛命兄妹の樹木生成・植林神話として仕上げられる。
記紀神話では、国生みに続いて、海、川、山に続き木の神久久能智神や野の神の鹿屋野比売神(草野神)、更に家屋成立の神とされる大屋毘古神等を生んでいる。 大屋毘古神は紀の国に鎮座する神で、八十神から逃れた大国主命が木の国の大屋毘古神のもとに来、木の又より須佐之男のいる根の堅州国に至る神話が古事記に記されている。 この大屋毘古神は伊太祁曽神社の祭神の五十猛命とは同神異命とされる。
大屋毘古神は紀の国の土俗信仰であった。紀氏の水軍の活躍で各地に伝播していった。山の神、紀の神、船の神、航海の神となっていった。 「山の神の木種蒔き」の日には、入山を禁じる国もあったと言う。
久久能智神と草野比売神
建築用材の木の霊魂。家船久久遅神。家の屋根の葺く草の霊。屋船豊宇気姫神
静岡県賀茂郡河津町田中154
杉桙別命神社
兵庫県西宮市山口町下山口字大弓201 公智神社
和歌山市秋月365
日前國懸神宮
和歌山県海南市重根1125
千種神社
「草野姫神」
久久能智神と草野比売神の組み合わせは、五十猛命と名草姫として出現する。
九州の家屋の神 中期から後期縄文時代
紀の国(木の国)は南九州にあった。天照大神と素盞嗚尊との誓約で生まれた天津彦根命は木の国の造とされる。 南九州に木造建築、木工技術をもたらした神で、後に紀の国に東遷する日向から国東半島に展開していた紀氏の木の文化の象徴神であった。 紀の国には既に木の神としての大屋毘古神が鎮座、そこへ半島から五十猛命信仰が九州、出雲、紀の国へと持ち込まれていた。
大屋毘古神 前期縄文時代に大きい家屋が建てられ始めた。
弥彦神である。白日別、大禍津日神と同一神格と推定している。後に五十猛命も習合する。
和歌山県和歌山市伊太祁曽558
伊太祁曾神社
新潟県西蒲原郡弥彦村弥彦2898 伊夜比古神社「弥彦神 または 天香山命」
新潟県佐渡郡羽茂町大字飯岡字一の宮583 度津神社
福岡県筑紫野市大字原田字森本2550
筑紫神社
「五十猛命、白日別神」
京都市南区久世上久世町773-3
國中神社
「大綾津日神 ほか」
紀の国の大国主命
和歌山県和歌山市鷺ノ森明社丁2
朝椋神社
和歌山県那賀郡貴志川町國主1
大国主神社
和歌山県東牟婁郡那智勝浦町那智山1番地
熊野那智大社
根の堅州国
素盞嗚尊の隠遁の場所、神奈備
和歌山県有田市千田1641
須佐神社
島根県簸川郡大社町大字日御碕455 御碕神社
忌部氏の木材加工
忌部氏のもう一つの役割は神事に携わる事であったが、後世中臣氏に重点が移った。斎部広成が「古語拾遺」を表し、祖先以来の経歴を述べて、対抗している。 忌部氏の遠祖は天岩戸隠れの段で活躍する天太玉命である。天太玉命の後裔に天日鷲命(阿波忌部氏の祖)、手置帆負命(讃岐忌部氏の祖)、彦狭知命(紀伊忌部氏の祖)、天富命(安房忌部氏の祖)となった。
徳島県鳴門市大麻町坂東字広塚13
大麻比古神社
「大麻比古神」天太玉命、猿田彦命などの説
徳島市二軒屋町2丁目48 忌部神社「天日鷲命」
香川県善通寺市大麻町上ノ村山241 大麻神社「天太玉命」
香川県観音寺市粟井町1716 粟井神社「天太玉命」
香川県三豊郡豊中町竹田214 忌部神社「手置帆負命」
千葉県館山市大神宮589 安房神社「天太玉命」
和歌山市鳴神1089
鳴神社
「本来は天太玉命」
和歌山県那賀郡桃山町神田101
三船神社
「木靈屋船神 配 太玉命、彦狹知命」
和歌山市下三毛508
上小倉神社
「手置帆負命 配 彦狹知命」
紀の国の忌部氏は当地の木材をもって大和大権の宮殿の建築等を司ったとされる。
半島の樹木崇拝
現存する堂山木 百済−−北方へつながる(日本の渡来文化:中公文庫) 百済の木氏が蘇我氏、紀氏になる?
参考文献 和歌山県史 原始・古代
紀の国・和歌山にゆかりの人のページ
紀の国古代史街道
神奈備にようこそ