熊野古道中辺路、和歌山県の王子社
一ノ瀬王子 春日神社

西牟婁郡上富田町市ノ瀬小山 JRバス市ノ瀬 地図

樹齢を重ねた樹木の下の一ノ瀬王子の祠


 『御幸記』では、石田御所で昼の休憩をとったあと、「石田川を渡り、一ノ瀬王子に参ず」と出てくる。 石田川は滝尻付近から下流の富田川を言う。この川は川垢離(かわごり)の場所であった。
 富田川は岩田川とも呼ばれ、『平家物語』には「この河の流れを一度渡るものは、悪業煩悩無始の罪障消ゆる」と記され、この河による水垢離は厳粛なものであったようだ。
 熊野の霊山からの水に始めて触れるわけで、古道中の神聖な場所であった。 『熊野御幸記』には、この川の増水によって一ノ瀬王子付近で9名が溺死したと記されている。

 市ノ瀬橋南詰を左折して、富田川を左に見ながら歩くと小山集落の山裾に一ノ瀬王子跡の祠が祀られている。
 明治末期、対岸の春日神社に合祀され、跡地は竹藪に戻り、「藪中王子」と呼ばれたと言う。清水王子(きよみず)、伊野王子とも呼ばれたという。

一ノ瀬王子の祠


紀伊続風土記 巻之七十三 牟婁郡 岩田郷 市瀬村

 市瀬王子社 境内山周二十四間
 清水小山にあり 御幸記に一瀬王子とある是なり 拝殿あり


 



春日神社 西牟婁郡上富田町市ノ瀬1999 its-mo

拝殿


祭神  武甕槌命、經津主命、天兒屋根命、比賣大神
由緒 往古、大和の春日四所大明神を勧請したと伝わる。 江戸時代には市ノ瀬村の産土神で春日大明神と呼ばれていた。

 近隣の神社を数多く合祀している。 

摂社
若宮神社「天押雲尊」
厳島神社「市杵嶋姫尊」
熊野神社「伊弉册命」
日吉神社「大山咋命」
稲荷神社「保食神」
地主社「大地主神」
日神社「天照大御神」
大神社「豐受皇大神」
天満神社「菅原道眞」
金比羅神社「大名牟遲神」
八坂神社「須佐男命」

社殿遠景

祭礼 10月13日 例祭(大祭)


平成祭礼データ


御神徳 武甕槌命、経津主命の2神は、「古事記」「日本書紀」にその神徳を伝えられているとおり、天照大神の大命を拝し、大国主命に勅命を伝へて、此の国を天孫(瓊々杵尊)に献奉らしめ給ひ、更に諸国を巡り民を慈しみ、国土平定の大功を樹てられた神である。武道の神、心願成就の神として崇められている。また、武甕槌命は、本質的には雷神であり、水の恩恵を下す農業神である。つまり家業繁栄の神とも崇められている。武甕槌命は、茨城県の鹿島神宮(別表神社、元官幣大社)経津主命は千葉県の香取神宮(別表神社、元官幣大社)が夫々根本社である。天児屋根命は、天照大神が天岩戸に隠れ給うた時祷言を申して功を樹て、瓊々杵尊に随い神籬を持ち葦原中国に降り祭祀を奉仕し、又常待して輔弼の大任に当たり、大いなる功績を樹てられた神で、神道の始祖(初代の先祖の意)文教(学問)の祖神と崇められ、御神徳は、永久に仰がれ給う。比売大神は、天児屋根命の祀神にして、内助の功績を挙げ、良妻賢母、として、淑徳(婦人の善良な徳)高く、家庭幸福、子孫繁栄の祖神と崇められている。以上二神は、東大阪市出雲町の枚岡神社(別表神社、元官幣大社)が根本社である。

創祀 創建については未だ明かでない。宝歴十四年(一七六四年)の覚書(興禅寺)には「奈良勧請之由承伝候尤勧請之時節相知レ不申候共往古よ里在所之者産宮ニ祭来ル、天文年号(一五三二年)祝言有之也」とある。 勧請は、明かでないが、大和の春日大社の四所大明神を勧請したと伝えられている。領主山本氏のとき氏神としていたと云う。江戸時代以降は市ノ瀬村の産土神とし、社名は春日大明神または春日社と呼ばれ崇敬された。

神輿渡御神事 享保九年(一七二五年)の古文書「弁財天祭祀輪番記」に、「夫弁財天者擁護於万物之善神也于滋紀伊州牟婁郡櫟原荘一瀬村前河蓬島之弁天宮崇敬数百間也従古当村春日明神之称館所也斯先貞享元年氏子一意而云云・・・・・・」と記されている。此の蓬島は、明治二十二年八月の大水害に流失し、現在その影はないが、その附近の川原を旅所と選定めて、十月十三日の例大祭に神輿渡御神事が行われている所以である。

神賑行事奉納芝居 芝居小屋のことを昔からちょうやと呼んでいる。本殿の正中(真中のこと)の延長がちょうやのまん中であり、しかも本殿と平行に構えられている。正に奉納芝居の精神があらわれている。此の奉納芝居の始まりは明かでないが、昔から神事として若衆等が中心となって受け継がれている。お祭りの一ヶ月余り前から夜遅くまで練習に励み、十月十二日の宵宮祭り、十三日の二夜にわたって大賑である。
以上


紀伊続風土記 巻之七十三 牟婁郡 岩田郷 市瀬村

 春日社 境内森山 東西五十間 南北七十間
 摂社  王子社  末社 若宮
  拝殿   護摩堂
 後代と云ふ所にあり 一村の産土神なり 古奈良より勧請すと云ひ伝ふ 此社山本氏領主の時氏神なりしより其遺形にて祭祀の儀今に猶盛なり 市瀬踊と云ふ踊あり 歌の辞領主を祝せる辞なり

 



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