ウガ 耳 美美 見 看 美  の ついている 神々


                           
1.神武天皇の前後の神々

        高御産巣日        天照大神
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         万幡豊秋津師比売―――天忍穂耳             大山津見
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     綿津見          邇邇芸――――――――――木花之佐久夜毘売
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     豊玉毘売―――――日子穂穂出見                 陶津耳
      妹           |                    |
     玉依毘売―――――鵜萱葺不合     三島溝杭耳  大物主――活玉依毘売
                   |      孫     |     |
     阿比良比売――神日本磐余彦火火出見――比売多多良伊須気余理比売 大田田根子
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     多芸志美美   神八井耳 神沼河耳(綏靖)―――――磯城県主の娘
     岐須美美              |
                     師木津日子玉手見(安寧)―磯城県主の娘
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        師木津日子 息石耳 大日本彦耜友(懿徳)―――磯城県主の娘
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       和知都美

 
 邇邇芸から懿徳までの7代にわたって海人系の妃を娶り、ミミ ミ のついた皇子を得ている。北方系支配者が先住民の娘を娶り、勢力を拡大していったが、生活様式は土着民化していった。神武後4代からミミ ミ が消える。妃の親元が豪族や皇族に変ってきたからであろう。

2.外戚
高皇産霊     高木神ともいう。7世紀以前の皇祖神。北方系の神。『顕宗紀』天地を鎔造したとある。金属神の面影もある。
大山津見     大山津見とは大山に住む即ち大山を司る神、山神。 また和多志大神の和多は綿津見(海神)のわたであり、海の意味。 大山津見神を祀る大山祇(大三島)神社の杜伝では山・海山兼備の神である。
綿津見      安曇連等が祖神として奉齋する神。阿曇連等は、綿津見神の子・宇都志日金柝命の子孫。 穂高神社では、宇都志日金柝命を穂高見命といい、安曇族の祖という。
大物主      海を照らしてくる神(神光照海)で、大己貴の幸魂奇魂と名乗る。三輪山に坐す神。

三島溝咋耳    神武皇后の祖父。
磯城県主     大物主を崇拝する一族

3.『魏志倭人伝』によれば、倭国の武器は耳朱崖のものと同じであるとしている。は担と同義。海南島のことである。『漢書地理志』には、は担耳の者は大耳をもち、王者の耳はみな肩下三寸にまで下がると記されている。また、は担耳とは、耳が長くて肩に垂れ、肩に耳をのせていることを指すという。
 このような海人種族が北上して、南九州に到達して生活をしていた。ここに北方から渡来した高霊皇産神を奉じる支配階級が海人族の娘を娶って後裔を生ませたのがこの系譜からうかがえる。
 綏靖・安寧・懿徳の三天皇は磯城県主の娘を娶っている。磯城県主は大物主を奉ずる氏族であり、大物主は神光照海と依り来る神であり、やはり海神である。

4.その他の耳
『肥前国風土記』の値嘉の郷に西の海に見える島についての記事がある。その島へ安曇連百足を見にやらせると、第一の島の小近に大耳、第二の島の大近に垂耳という土蜘蛛がいた。白水郎(海人)は、容貌が隼人に似て言葉も世人とは違うとある。
 五島列島は黒潮が流れて入り、気温は南九州と似ており、交流があったのだろう。
 『魏志倭人伝』の投馬国の長官は彌彌(弥弥、ミミ)、副官は彌彌那利(弥弥那利、ミミナリ)というとある。
 吉備の御?友耳建日子は日本武尊の東征にお供をした。
 紀伊の豊耳は神功皇后の時代の人である。

5.金属と耳
 素戔嗚尊が娶った櫛稲田媛は稲田宮主須賀之八耳神(足名椎)の娘であった。
 天日矛命は但馬の国の前津耳の娘の麻多烏(またのお)を娶った。
この二神は金属に関係している北方系の神である。奇しくも耳のつく人は南方系と思われるが、その娘を娶っている。耳は金属と関わる。北方の金属神と南方の耳、権力の源泉である。天皇家の耳もそう言えるだろう。
                                     以上

参考書
『アマレラスの誕生』溝口睦子 岩波新書
『黒潮の民俗学』谷川健一 筑摩書房
『青銅の神の足跡』谷川健一 小学館ライブラリー

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