古代から続く模様


万巻八 一四一八  石ばしる 垂水の上のさ蕨の 萌え出づる春に なりにけるかも


志貴皇子の歌 皇子は天智天皇の第七皇子、皇子の子に光仁天皇

さ蕨の「さ」は神聖さを示す。蕨手文は死者の永遠を願う、死者が生を止めずに永生することを願う文様。

(1)渦巻き紋

@縄文土器の渦巻き紋

 蛇が巻き付いたような模様の土器も見られる。渦巻き蛇のとぐろとか蛇の体の模様なども渦巻きを思わせる。

A銅鐸の渦巻き模様

 この模様は指紋に多い流れ模様ですが、この多くの線が直行すると、格子状を呈することになる。 銅鐸には斜めの格子柄も多い。

B珍敷塚古墳

 6世紀後半(古墳時代後期)の古墳。丸い模様の下に見える蕨模様が興味深い。葬られた人の永遠の命を願っていると言える。志貴皇子の歌の「さ蕨」であり、春の生命力の旺盛さを意味する渦巻き。蕨手文は死者の永遠を願う、死者が生を止めずに永生することを願うのである。

C隼人の楯

 隼人の楯は平城宮の井戸の跡から発掘された。奈良時代で8世紀のものと思われる。 その渦巻きの組み合わせには、男女の神々を示すとかの様々な解釈がついている。大宇宙にもこのような銀河が存在している。所謂フラクタルである。

D江戸城の堀

 江戸時代にも渦巻き模様の堀であり、敵が直進できないように固めていた。現在は地下鉄が皇居の下を通さないとの方針で、一層渦で取り巻いているようになっている。
 渦巻きで取り囲むのは戦術的な防衛面だけではなく、永遠を願う呪術的な意味も大きかったと云う。

 渦巻き紋ははるかなる古代から、また各地でも同じように尊ばれたと云う。

 とりあえずはギリシャ → 中央アジア → チャイナ → 唐草模様

 ダ・ビンチは水中の渦巻きを観察、ゴッホは杉の木の枝に渦巻きを見ている。渦巻きに永遠の生命を見た。神社の神紋に三つ巴が多いが、水中の渦巻きのイメージから水、即ち火災予防を願う。

(2)迷宮

倭は 国のまほろば たたなづく 青垣 山隠れる 倭し うるわし

E北海道の五稜郭

 フランスの城をまねる。渦巻きで城郭を守る形が進化した姿と言えようか。米軍のペンタゴンも五角形。

E大阪府富田林市の寺内町

 寺を中心としてあみだくじ風の道を組み合わせで、敵の侵入を妨げるように設計・建築された町である。都市の迷宮であり、都市の永遠を願ったのである。

 これは銅鐸の流水紋の変化模様のように思われる。阿弥陀くじと呼ばれる由縁は阿弥陀像の後背の模様に似ているからと云う。

(3)セーマン(五芒星)とドーマン(横五本、縦四本)の模様

この図模様は伊勢の海女の身を守る呪物としてヘラなどにつけられている。

セーマンは晴明桔梗と云う。五角形は陰陽五行の五。一筆書きで切れ目がない。


 バン 東方降三世夜叉明王
 ウン 南方軍茶利夜叉明王
 タラク 西方大威徳夜叉明王
 キリク 北方金剛夜叉明王
 アク 中央二大日聖不動明王

ドーマン 流水紋からの迷宮、平安京は変形迷宮。

呪文
 臨 リン
 兵 ビョウ
 闘 トウ
 者 シャ
 皆 カイ
 陳 ジン
 列 レツ
 在 ザイ
 前 ゼン

参考 『古代日本人・心の宇宙』中西進著 NHKライブラリー

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H18.5.28