浪速の古代史 食

昔話・伝承 古そうなの


呪的逃走 牛と方山姥


山姥が牛車の荷・牛を食べ、牛方をも食おうとして追いかける。牛方は逃げて逃げて遂には山姥の家に入り込み、その天井に隠れた。帰ってきた山姥は餅を食べ、釜の中で寝てしまった。
 そこで牛方は釜の蓋に石を置き、熱湯を注いで山姥を殺した。また釜戸にを火をつけて焼き殺す話もある。
山姥の黒焼きは万能薬となったという。


黄泉国と天日矛


 黄泉国訪問のイザナギがイザナミとその眷属に執拗におわれ必死に逃げる。イザナミは物を投げながら逃げる。

オホゲツヒメ・ウケモチの死体から食物がでる。

古事記 天日矛が「農夫は弁当に加えて牛ごと食べてしまう」と疑いをかける。


呪的逃走 鎖と縄


三人姉妹が留守番をしていた家に山姥が母に化けて入り込んだ。末の妹を連れて隣の部屋へ行った。そこで山姥が妹を食う音を姉妹が聞いた。
姉妹は家を逃げ出したが、山姥が追いかけて来た。追われて崖で行き止まり。「天道さんの金の鎖」と祈ると、鎖が現れ無事下た。
山姥は腐れ縄と言い間違い縄が切れ死んだ。血が流れ根本が赤い蕎黍が生えた。


記紀 狩猟と農耕


死体から農作物が生える。オホゲツヒメ・ウケモチの神の死体と同じ

播磨国風土記讃容郡 鹿の血に稲をひたして播くと、一夜で苗が生た。

狩猟と農耕のつながり、予祝行為を示すか。


呪的逃走 投げて障害物をつくる


小僧が叔母さんと間違って山姥の家に泊まる。小僧は気が付いて逃げるが山姥に追いかけられる。和尚がくれた護符を次々に投げて、砂山や大川を造り、追跡を防ぐ。


記紀


イザナギが黄泉国から逃走。追いかけられる。髪飾りがブドウになり食べている間に逃げる。櫛が筍になり食べている間に逃げる。桃は魔よけになる。


火中出産


山姥が産気づき、岩屋に入ってお産をしていた。村は蕎をまく時期で、山焼きをしていた。 その火が岩屋に廻って山姥は焼け死んだ。それからは村に災難が続いた。それで山姥を祭ったと云う。

 高知県香美郡香北町 大山祇神社 ご神体は頭蓋骨。


記紀 焼畑


イザナミ 火の神を生み火傷で死ぬ。

木花咲夜姫 産屋に火をつけて出産する。

焼畑農耕の伝承が遺っている。


火の誕生


ある女がいつも一人で食事をするのを不思議がってのぞき見をすると、腹を強くおし、産道から火の玉が転がり出てきた。この火で料理をして食べていた。

<人面付き釣り手土器


記紀 焼畑


イザナミ 火の神を生み火傷で死ぬ。カグツチはイザナミから生まれた。
カグツチはハニヤマヒを娶り、稚産霊を生む。即ちワクムスビの神。ワクムスビの頭の上に蚕と桑が生じ、臍の中に五穀が生まれた。
火と土器で煮炊きができた。

古事記 天日矛の話 阿具沼のほとりで日光に感精し女が赤玉を生む。


糞が綾錦に


山姥がウル娘に飯を炊かせて、頭の上の口から食べる。次の日も、また次の日も色々な物を食べた。大量の糞を残した。娘がこれを川で洗うと、五色の綾錦が得られた。


死体化生


イザナミが死ぬ前に有用な神々を吐き出した。

オホゲツヒメ・ウケモチは身体から色々な食べ物を出した。



昔話・伝承 石とバナナ


ハイヌウェレ型神話



ハイヌウェレはココヤシの木の上で実が生じるように誕生。体から宝物を大便として排出し、人間の祖先達に与えた。祖先達は気味悪くなった、深い穴に落として生き埋めにした。
父親が死体を掘り出し、多くの断片に切り刻んで別々の場所に埋めた。
断片はそれぞれ違う種類の芋になった。




山姥は死ぬことで作物を発生させる。


オホゲツヒメ・ウケモチ

古事記
オホゲツヒメの死体
鼻・口・尻からご馳走を出す。頭からカイコ、両目からイネ、両耳からアワ、鼻からアズキ、陰部からムギ、尻からダイズ。

日本書紀
ウケモチの死体
鼻・口・尻からご馳走を出す。頭から牛と馬、額から粟、眉からカイコ、目からヒエ、腹からイネ、陰部からムギ・ダイズ・アズキを出した。

オホゲツヒメ・ウケモチも死んでいる。

谷川健一説


余談
阿波国とオホゲツヒメ 谷川健一氏
頭 蚕 児島半島
鼻 小豆 小豆島
両耳 粟 阿波
陰部 麦 牟岐(徳島南部)


コノハナノサクヤビメ型神話
食べ物と寿命



スマトラ西のニアス島
大地創造の仕上げのため、人が天から降ろされた。一ヵ月断食を命令された。空腹に耐えかねてバナナを食べた。もしバナナのかわりに河蟹を食べれば、不死を得たはず。

中央セレベス
人間は創造神が天から垂れ下す贈り物によって命をつないでいた。ある日、石が下された。何か別の物をくださいと叫んだ。神は石を引き上げてバナナを降ろした。


天孫の子孫の寿命

天孫ニニギ命は木花咲夜姫と結婚することになり、父神の大山祇神は姉の石長媛と二人を差し出した。ニニギは醜い石長媛を返して、木花咲夜媛と結婚した。父神は「石長媛を娶っていたなら、天孫の子孫の寿命は恒なる石のごとく長くなったが、返したので木花のようにもろくなるでしょう。」と託宣した。



稲作伝来と共に伝わってきた話



稲作が特別のものであること。
稲作以前に焼畑で粟が栽培されていた。

稲作の導入によって権力構造が発展した。

迷える小羊=青人草。


稲は特別なもの

古事記 オホゲツヒメ

オホゲツヒメ(粟)が死に両目に稲種が生じた。
(イザナギの両目から生まれたのは天照大神と月読神)


日本書紀 ウケモチ

これらは青人草の食するもの。




アッサム 天岩戸神話

太陽が世界の果ての岩屋に隠れた。皆が声をあげて呼ぶが出てこない。雄鶏が美しい鳴き声をあげると出ることを承知した。太陽が出ようとすると大きい岩で塞がれていたので、大力の猪が岩を持ち上げ、太陽を出した。


猪と天手力男

『播磨国風土記賀毛郡』
天照大神のおられる舟上に猪を献上した。

『日本書記』
天手力男が天の岩戸を引きあけた。

『住吉大社神代記』「佐那神社」
日神を舟に載せて出すのは船木氏の役割で、天手力男のがその祖。「佐那神社」



米に対するふるまい



計画的に食物を生産し貯蔵すること


豊作と飢饉

『日本書記』
諾冉尊が飢えて気力がなえた時、倉稲魂命を生んだ。

『豊後国風土記』
餅を的にした農民は死に絶えた。

『日向国風土記』
天孫が天降る際、稲籾を投げると、一帯が明るくなった。

弥生後半から古墳時代に伝来したギリシャ神話


掟破り


オルペウスは死んだ愛妻を生き返らせようと地下の冥府まで行った。しかし見ることを禁じられた妻の姿を見てしまったので、失敗した。


『日本書記』

イザナギがイザナミの死体を見てはならないとの約束を破ったことで失敗した。

黄泉戸喫


ペルセポネが冥府から地上に返されるより前 に、死者の国の食べ物を食べていたので、地上に戻ることができなかった。


『日本書記』

イザナミは黄泉戸喫をしたので、簡単には生き返る許しがでなかった。


ストリップ


ペルセポネの母神は娘が冥府に連れ去られたことを怒り、神々から姿を消し、地上を飢饉にした。バウボと言う女が滑稽なやりかたで女性器を剥きだしにして見せると、可笑しさに耐えかねて、飢饉にするのを止めた。


『日本書記』

天照大神を天岩屋からおびき出すべく、アメノウズメが乳房と陰部を出して踊って八百万の神々が大いに笑ったのを天照大神は不思議がって少し天岩戸を開けたので、結局の所、天照大神は天岩屋を出ることになった。


縄文の食事 三内丸山遺跡

人が居住後に増加したもの
 クリ オニグルミ  ニワトコ  若葉  果実  キイチゴ タラノキ サルナシ キハダ黄檗  ミズキ  クワ   ムササビ   ノウサギ カモ   ブリ かれい  フグ   サバ   メバル  淡水貝

サケ アイヌの主要な食糧であるが、三内丸山からの出土は少ない。栗の収穫時期とぶつかるか。
ブリとサバは背骨が頭より圧倒的に多く出土。外部から干物で持ち込みか。


卑弥呼の食卓 金関恕編 吉川弘文館 から

玄米の炊き込みご飯 ゼンマイ タケノコ
タイの塩焼き
ミョウガ
サトイモ タケノコ ブタ肉の合わせ煮
ハマグリとイイダコのワカメ汁 木の芽あえ
アワビの焼き物
ショウサイフグの一夜干し
炒りエゴマ風味キビモチ
アワ団子のシソの実あえ
ゆでワラビ


神饌として使われているもの

地鎮祭 タケノコ
今宮戎 塩鯛 小鯛
荒見神社 藁に茗荷を巻き付ける
地鎮祭 タケノコ
今宮戎 ハマグリ
伊勢神宮 熨斗アワビ
頭に「フ」がつく品 蕗 鮒 河豚 麩 など
黒姫神社 キビモチ
大嘗祭 粟と米
舞鶴の熊野神社 ワラビ

大阪の神社の神饌の紹介

今宮戎神社 十日戎 浪速区恵美寿

本膳
赤飯 生の小鯛
生蛤 大根と人参のナマス
神酒 サワラ

住吉神社 一夜官女神事 西淀川区 野里 狒狒への人身御供の名残

豆腐の味噌だき   神酒   御供飯  お鏡餅 西条串柿   大根   小豆のあえもの   真菜のあえもの   鮒   鯉   鯰

香具波志神社  初午大祭  淀川区加島

白蒸し餅  神酒  小餅  生鮒   結び昆布   勝栗 白豆腐   大福梅   柿ナマス田作

鼻川神社 無言の神事 西淀川区花川

精進の御膳 白蒸し  オコワ   平  松茸  小芋   焼豆腐  牛蒡の煮物  汁 白豆腐 大根 小芋を味噌ににしたもの   ナマス  大根  柿   栗
生臭の御膳 平 焼豆腐 ハマチ 牛蒡 松茸 小芋の煮物  汁  大根  小芋  白蒲鉾の味噌汁   ナマス  大根  ハマチ   栗   生姜  芹

八坂神社 御饗神事 福島区海老江

(1) 弥栄の御膳
睦月 鏡餅一重ね 串柿 橙 昆布 添花ー松枝
如月 土生姜 ほうれんそう カンピョウ 添花ー水仙
弥生 生鯛 赤貝 添花ー櫻
卯月 蛤 蜆 カキ貝 添花ー花菜種
皐月 フキ サヤエンドウ 添花ー白菊
水無月 薩摩芋 人参 山の芋 牛蒡 添花ー白菊
文月 胡瓜 南瓜 三葉 添花ーささ
葉月 ナス 赤リンゴ 梨 添花ーアカシア
長月 柿 鶏卵 ウズラ卵 青トウ 添花ー黄菊
神無月 カブ 榎茸 高野豆腐 生椎茸 添花ーさざんか
霜月 昆布 みかん 柚子 干椎茸 ギンナン 添花ー猫柳
師走 蓮根 菊菜 百合根 添花ー南天

(2) イナナマス

(3) 白蒸し  イナ 大根 芹 榊 モチ米蒸し

(4)菊花のキョウ  豆腐 大根 里芋 榊 

(5)イナズシ イナ 白蒸し

(6)狛犬さん 蒸しご飯


参考文献 吉田敦彦『昔話の考古学』中公新書、森浩一編『味噌・醤油・酒の来た道』小学館  岩井宏実・日和祐樹『新饌』法大出版


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