神奈備の物理雑談 6

デモクリトス
 古代ギリシャの哲学者のデモクリトス(前460−前360頃)は、物質の最小の姿(原子 ATOM と名付けた)を考えました。物質をトコトン刻んでいくと無限に小さくなると思われていたのですが、無限に小さいもの(ゼロ)をいくら重ねてもゼロであると悟り、原子の考えに至りました。  ところが、後世のアルキメデスは自然科学的な説を退け、現象を善悪から説明し、原子の考えは葬られてしまいました。人類の科学の進歩は2000年近く遅れてしまいました。
 デモクリトスは大地は球体であり、浮かんでいると考えていました。
画像 デモクリトス
 

宇宙論の歴史
1916〜  一般相対論宇宙モデル(アインシュタイン)重力は空間の曲がりのこと
1929   宇宙膨張の発見(ハップル) 遠くの銀河ほど一艘速く遠ざかっている
1946〜  ビッグバンモデルの提唱(ガモフ)熱い火の玉の宇宙で誕生
1965   宇宙マイクロ波背景放射の発見 熱い火の玉宇宙の名残
1980~  宇宙の大規模構造の発見 銀河<銀河群<銀河団<超銀河団        インフレーション理論 素粒子論的宇宙論
1992   宇宙マイクロ波放射から温度ゆらぎの検出 COBE衛星
1990〜  ダークマター    恒星や銀河の形成に不可欠
       ダークエネルギー  宇宙を加速膨張させている
画像 宇宙論
 

宇宙の広さ
地球の表面を考えましょう。一方の方向へどんどん進んでいきますと出発した元の場所に戻ってきます。宇宙も同じように一つの方向へ進んでいきますと元の出発した場所に戻ってくると考えられています。三次元の球面とでも呼ぶべき構造と思われます。宇宙は無限の広さではないと思われますが、果て(端)もありません。
無限の大きさという説もあります。
画像 三次元球面の二次元イメージ
 

最小の距離
 ニュートンの重力の式は、それぞれの物体の重さに比例し、物体間の距離の(自乗)に反比例するというものです。そこで物体間の距離がゼロに近づくと重力は無限大になってしまいます。これでは世の中の物体は全部ひっついてしまい、動きがとれなくなります。
 なにが問題かというと、物体間の距離に下限がない、ゼロに近くなるということです。そういう所から、ドイツの科学者のプランクさんが、これ以上小さくならない距離があると考えて、それをプランク長’(距離)と名付けました。

プランク長 = 1.616]10^―35m 10のマイナス35乗 小数点以下にゼロが35個並ぶ

プランク時間  5・39]10^―44s 秒 光がプランク長を飛ぶ時間
ほかにも、プランク質量、プランク温度、プランク電荷 が 定義されています。
画像 プランク
 

インフレーション
 宇宙が誕生するとは、空間と時間とエネルギー(物質)が誕生するということです。誕生したての宇宙のサイズは直径がプランク長の猛烈なエネルギーの塊と想像できます。
 この小さな塊は、激しい勢いで膨張しました。佐藤勝彦先生は、この膨張は倍々ゲームであったとし、指数関数的膨張と呼びました。後に米国のアラングースがインフレーションと愛称をつけました。佐藤勝彦先生はーベル賞の有力な候補者と思われます。
画像 佐藤勝彦先生
 

続インフレーション
 宇宙は膨張で10^+43倍になったとされており、地球の12倍の直径になったそうです。
もともと、宇宙はギザギザの状態だったようですが、猛烈な引き延ばしによって、大きく見ると宇宙は現在のように等方で一様で、平坦になりました。このことを説明できるのは、インフレーションがあったと言うことで、おおくに学者も納得しています。なおインフレーション後の宇宙のサイズは、直径1cm程度だったとか太陽系以上とか銀河系サイズとの説があります。スタートのサイズがはっきりしないので、到達点もすっきりしないのでしょう。
画像 ギザギザ宇宙
 

続続インフレーション
インフレーションが何故、終わったのか、空間のエネルギーが少なくなったからとしか言えません。
 宇宙空間が一斉にインフレーションが終わったとは限りません。バラバラに終わった場合、幾つかの宇宙に分かれたのかもしれません。宇宙の中に宇宙が出来たのかもしれません。
多くの宇宙があることをマルチバースといいます。まだ確認はできていません。
画像 多元宇宙
 

宇宙が始まる前は
 宇宙誕生以前には何があったのか。
 前世の宇宙があり、宇宙全部を?み込んだ巨大ブラックホールが時空間とともに縮小して消えてしまい、その裏側に新しい宇宙が誕生したと考えていますが、証拠をお示しできません。
 縮んだ宇宙は、強烈なバネのようにもの凄いエネルギーをためこんでいました。このネルギーをポテンシャルエネルギーと言います。バネが縮んだ状態です。  
 このポテンシャルエネルギーは続く宇宙の猛烈な膨張(インフレーション)につながっています。
画像  宇宙誕生
 

宇宙にインフレーションを起こしたエネルギー
縮んだバネを解放しますと、思い切り伸びます。これをポテンシャルエネルギーの解放と言います。宇宙のインフレーションはこのように起こったものと思われます。バネのパワーがある程度以下の水準に落ちますと、インフレーションは終了します。この時の宇宙は、水が氷に変化するように相が転移すると言います。凝固熱(=融解熱)と同じような熱が空間に出てきます。このエネルギーがビッグバンを起こしたのです。
画像 凝固熱
 

宇宙年表
時刻        宇宙の大きさ       温度       宇宙の事件
1/10の44乗秒 1.6/10の35乗m 10の32乗K  宇宙(時間空間)の誕生
1/10の43乗秒 1.6/10の35乗m 10の32乗K  四つの力から重力が分離
1/10の36乗秒                     強い力が分離
1/10の36乗秒―                    インフレーション開始
1/10の34乗秒 10の43乗倍になった         インフレーション終了
1/10の34乗秒 太陽系以上               ビッグバン
40万年     現在の1100分の1  3000K    宇宙の晴れ上がり                              宇宙マイクロ波背景輻射
5億年      現在の1/10      30K     初期天体の誕生
92億年     現在の70%      3.8K    太陽系の誕生
100億年    現在の75%      3.6K    宇宙の加速膨張開始
138億年    1           2.7K
画像 宇宙の年表
 

四つの力
 自然界の力は次の四つに分類されます。  重力 我々や物体が地球にへばりついている力です。月の重力(引力)で潮の満ち引きが起こっています。
 電磁気力 磁石で釘などの鉄製品を引き付ける力です。我々が椅子に座っていられるのは、椅子を構成する各分子の間に電磁気力がはたらいて、椅子にめり込むのを防いでいるからです。
 強い力 原子の間に働く力です。湯川博士が発見してノーベル賞をもらいました。
 弱い力 素粒子の間で働く力です。 画像 四つの力
 

ビッグバン
 インフレーションが何故止まったのか。一説では、急速な膨張で、空間のエネルギー密度が下がり、例えば水が氷になったように、空間の相が変わったのが契機だと考えられています。水が氷になる時には融解熱がでるように、空間にもの凄い熱が出て、これが物質とその運動エネルギーに変わったと考えられています。アインシュタインは相対性理論のなかで、エネルギーと物質は相互に変換することを明らかにしました。
 E(エネルギー) = m(物質の質量)]c^2(光速の二乗)  この猛烈に熱い宇宙の状態をビッグバンとよんでいます。ここからも宇宙が膨張を始めました。
画像 ビッグバン
 

対生成、対消滅
ビッグバン宇宙の中で素粒子が生まれたり消えたりしています。対生成、対消滅といい、エネルギーから粒子と電荷が反対の反粒子が生まれ、またこれが合わさるとエネルギーに変わります。これが繰り返されたのです。粒子と反粒子とは同じ数ではなく、100億個に一粒の差があったようです。 光子やニュートリノのように電荷のない粒子は反粒子と同じものなので反応しないので、普通の粒子の100億倍存在していることになります。
量子力学では素粒子の分布にはゆらぎがあり、濃いところと薄いところができ、これが宇宙的規模に拡大して、銀河や恒星を構成しました。  後に紹介する宇宙背景輻射も極めて薄いのですが濃淡があります。
画像 対生成、対消滅
 

ニュートリノ
ニュートリノ、反粒子と性質異なる可能性高まる
 素粒子には、身の回りにある物質を構成する粒子と、電荷など一部の性質が反対の反粒子がある。138億年前の宇宙誕生時には粒子と反粒子が同数あったが、両者の性質が違うために反粒子がほぼ消滅し、現在は粒子ばかりが存在する。  一方、ニュートリノとその反粒子の反ニュートリノではCP対称性が大きく破れている、つまり性質が大きく異なっているとの仮説がある。解明すれば、宇宙に物質があふれている理由を突き止める大きなヒントになるかもしれない。そこでニュートリノでの破れの発見を目指し、この実験が続いている。実験名のT2Kは「東海 to 神岡」を意味する。
画像 電子ニュートリノ(左)と反電子ニュートリノを観測したスーパーカミオカンデのデータ(T2K実験国際共同研究グループ提供)電子ニュートリノ(左)と反電子ニュートリノを観測したスーパーカミオカンデのデータ(T2K実験国際共同研究グループ提供)
 

宇宙の膨張
 宇宙がごく小さい状態から始まったと考えたのは、宇宙が膨張していることが発見されたからです。アメリカの天文学者のハップルとベルギーの天文学者のルメートルが宇宙が膨張していることを発見しました。
 地球から銀河までの距離が遠いほど、その銀河が地球から離れていく速度が大きいことを見出したのです。
 これを逆に考え、過去に遡ると宇宙は小さかったことになります。宇宙に始まりがあったということになります。
画像  宇宙の膨張
 

宇宙の膨張
 ハップリが観測したデータを見ますと、宇宙の膨張が一目でわかります。これを時間をさかさまにみていくと、宇宙は小さい一点から始まったように見えます。150億年前に宇宙が始まったように見えます。はじまりがあったのです。
 宇宙の時間的な端である出発点が見つかったのです。  宇宙の時間的な最先端はまさに現在のわれわれです。宇宙の時間は我々を中心として四方八方に過去の時間が流れて行っています。宇宙の天球は宇宙開闢の時なのです。
画像 ハハップリが観測したデータ
 

出来立ての宇宙は熱い
 初期の宇宙はすべてが圧縮せれて密度が高い状態でした。膨張して徐々に冷えてきて、いまや絶対温度2.7度(摂氏氷点下270度)の極く低温です。
 膨張するということは、外にむかってドケドケと仕事をしますので、エネルギーを使うことになります。その分だけ冷えるのです。
 誕生直後の宇宙は100億度程度と見込まれています。それは初期宇宙の元素の分布から計算されています。92%が水素、8%がヘリウムという構成になっています。
画像 宇宙の温度
 

宇宙の地平線
 地平線とは、その向こうが見えないラインのことです。宇宙が138億年前に誕生し、膨張を続けてきました。138億年前に出た光は我々に到着するまでに、光の通った距離は3.4倍に広がっております。光の通った距離は464億光年と伸びています。この距離は膨張の最短距離と言えます。画像では、左側が宇宙の誕生、右側の円の中心が現在のわれわれの位置です。ところが宇宙は、下の画像でいえば、宇宙の太さの方向にも膨張しています。
 太さの方向、即ち宇宙の空間的大きさといえましょう。太さの膨張はけた外れに大きく膨張したと考えられています。戸谷友則先生は、10の30乗倍から10の50乗倍とみなしておられます。
画像 宇宙の絵
 

恒星間彗星
2019年8月にウクライナのGennady Borisov氏が発見し、同年12月に太陽へ再接近した「ボリソフ彗星(2I/Borisov)」は、その軌道から、太陽系の外で誕生した後に飛来した恒星間天体だと考えられています。史上初めて見つかった恒星間天体は2017年10月に発見された「オウムアムア(’Oumuamua)」ですが、その名が示すようにボリソフ彗星は彗星としての活動を示したことから、観測史上初の恒星間彗星としても知られています。
画像 「ボリソフ彗星」
 

加速膨張
 恒星に寿命がきますと、重さによっては、超新星爆発を起こします。1a型超新星はよく観測されてその性質があきらかになってきました。爆発時の明るさが同じようになるのです。これを利用するとその星までの距離が計算できます。超新星爆発のある銀河のまでの距離を明らかにできます。
 20億光年以内の銀河の内部の1a型超新星爆発による明るさは、計算より暗くなっていました。これは光が計算より赤方偏移していることになり、一層遠ざかっていることがわかりました。これで宇宙の膨張は加速していることがわかりました 宇宙の年齢は138億年ですが、最近の20億年は加速膨張しているのです。
画像 加速膨張
 

加速膨張
 アインシュタインは宇宙は定常的なもの(膨張も縮小もせず、落ち着いている)と思い込んでいました。一種の信仰です。ところが、彼の相対性理論の宇宙方程式からは、膨張するとか縮小する と答えが出ることになり、自分の式を信じず、定常になるように、宇宙定数を方程式に書き込みました。理論から導かれたものではなく、思い込みからの挿入でしました。
 宇宙の膨張は誕生以来の慣性で続いています。ところが、膨張以上の加速膨張は何故おこるのでしょうか。第二のインフレーションが起こっているとの見方もあります。空間(真空)の膨張で真空のエネルギーが増加しているのです。それで加速膨張が観測されるのでしょう。
画像 加速膨張
 

真空のエネルギーの検出
真空状態の中に二枚の金属板を近づけて配置します。金属板はお互いに引き合います。金属板の間のエネルギーは少なく、全体から押されるようになります。この力が真空エネルギーの存在の証と言えます。 この力で発電が出来れば、永久機関になりますね。
画像 二枚の金属板
 

宇宙の未来
空間のエネルギーは60億年前にもあったのですが、最近になって膨張が加速されてきたのは宇宙が膨張しているからです。宇宙内の物質の重力が宇宙を膨張させる斥力(引力の反対の力)を上回っていたところに、宇宙の膨張によって物質の密度が減少し、一層膨張するようになりました。
 この加速膨張が続くと、遠い将来の宇宙は雲散霧消してしまうのでしょうか。
 空間のエネルギーが現在の状態を永久に続けるのか、学者の中にはそのエネルギーは減少すると予言される方もおられ、未来の宇宙については、いくつかの姿が想定されています。
画像 宇宙の未来  
https://www.kahaku.go.jp/exhibitions/vm/resource/tenmon/space/theory/theory_fig05_2_v4-1.mp4
 
宇宙ゆらぎ
インフレーションの終了時の宇宙の温度は、10^+21 1兆の1億の10倍度の絶対温度だったようです。猛烈な拡大が終わって、宇宙はおとなしいゆっくりとした拡大期にはいりました。
 大きくなった宇宙で、各場所で一斉にインフレーションが終わると、現在のような滑らかな宇宙が誕生し、ゆっくり膨張を始めます。  初期の宇宙は極めて微小な存在ですから、量子力学的に理解する必要があります。すなわち初期宇宙は量子ゆらぎをしているのです。場所によって状態がわずかに違っているということです。これを宇宙ゆらぎとも言います。小さなゆらぎが宇宙規模に拡大して宇宙の大規模構造ができました。
画像 宇宙の大規模構造
 


隣の宇宙
インフレーションが各地でバラバラに終わった場合、宇宙は親宇宙、子宇宙、孫宇宙と沢山の宇宙が出来ることになります。このようになっていた場合、私たちの宇宙がどの段階の宇宙かはわかりません。私たちの宇宙が孤立した宇宙なのか、親もいれば子もいる宇宙なのか、今の科学技術のレベルでは知ることができません。しかし、遠からず、近隣にもう一つの宇宙があるならば、分かってくるように思います。遠方の銀河団が不自然に同じ方向に引っ張られているとの観測があります。この場合、隣の宇宙から引っ張られていると考えることができます。しかし、この観測には疑問を呈する学者もいて、結論にはある程度の時間がかかるでしょう。
 

重力相互作用の影響を“巻き戻す”
 統計数理研究所/国立天文台の白崎正人氏らの国際研究グループは、「宇宙の大規模構造」がどのように形成されたのかを調べるために、構造の進化を巻き戻して宇宙初期の状態に近づける手法を検証した結果を発表しました。今回開発された手法により、観測時間が大幅に短縮されることが期待されています。
 この宇宙には何千億もの恒星が集まってできた銀河が数多く存在していますが、銀河は無秩序に分布しているのではなく、泡のような構造を形作っていることが知られています。銀河の集まりが作り出す構造は「宇宙の大規模構造」と呼ばれていて、発表によるとその典型的なサイズは1億光年ほどに及ぶといいます。 画像 宇宙の大規模構造と再構築法のイメージ図。再構築法は、左奥から右手前へと移り変わる大規模構造の進化を巻き戻すことで、銀河の分布を左奥の宇宙初期の密度ゆらぎの分布に近づける手法
 

宇宙の晴れ上がり
 インフレーションが終了した段階では、宇宙ゆらぎは宇宙のデコボコとして残っていました。全く一様だったら、星も銀河もできなかったでしょう。
インフレーションが終わり、宇宙の温度が急上昇、ビッグバンが起こる。 そして、素粒子、光、熱が生まれました。 宇宙の温度が1兆度以下に下がると、素粒子どうしが結 び付き陽子と中性子が誕生。 宇宙の温度が3000度程まで下がると、電子が原子核に捕まり原子が誕生した。宇宙はプラズマ状態から脱し、光が宇宙空間に飛び出していった。宇宙の晴れ上がりといいます。宇宙誕生から約38万年後のことです
 

宇宙マイクロ波背景放射
宇宙の晴れ上がりで、宇宙に光が飛びだしました。最初に飛び出した光は宇宙空間を満たしました。その光の残像が今でも見ることができます。見るといいましても、光の波長は1000倍以上伸びていますので、マイクロ波(電子レンジ)になっており、電波としてとらえることができます。
この輻射は、しし座の方向からが強く、その反対のみずがめ座の方向が弱いのです。これは地球がしし座の方向に秒速370kmで運動しているからです。大阪からでは、元旦の夜中、南東方向にひくく、みずがめ座が見えます。
画像 天体図
 

宇宙マイクロ波背景放射
昔の白黒テレビで放送が終了すると画面に筋が写りましたが、これが初期の宇宙の光の姿です。これは宇宙マイクロ波背景放射とよばれています。
これを観測するために、三度目の衛星が2009年に打ち上げられました。プランク衛星と言います。これによる観測結果は、2013年3月21日に公開された。この結果、宇宙年齢は138億年、宇宙の物質・エネルギーの組成はダークエネルギー68.3%、ダークマター26.8%、バリオン(物質)4.9%であると求められました。
 

重力相互作用の影響を“巻き戻す
一様な宇宙
宇宙マイクロ波背景放射の画像では、きついまだら模様に見えますが、実際には10万分の1程度の濃淡の揺らぎしかありません。ほぼ一様と言えます。温度は絶対温度2.7度と極低温です。晴れ上がりの時の温度は3000度としますと、1100分の1になっています。宇宙のサイズが現在より、1100分の1の大きさ(小ささ)だったといえます。
宇宙マイコロ波背景放射はいくつかの宇宙の謎を解きました。
1 ゆらぎが検出されました。これで現在の宇宙に存在する構造が確認されました。ビッグバン宇宙の枠組みで、宇宙の構造―銀河、銀河群、銀河団 大銀河団―などを説明できました。
2 ゆらぎが小さすぎる。宇宙に通常の物質だけが存在している場合、構造になるまではもっと時間がかかるところですが、それより速くできているのは、見える物質以外のモノが存在している。これがダークマターです。
3 宇宙はどの方向でも一様ですが、これは宇宙に因果関係の存在することを現しています。インフレーションの効果があったということです。
画像 宇宙の一様
 

宇宙プラズマ状態
宇宙マイクロ波背景放射の発見は、宇宙がビッグバンから始まった証拠とされまそた。しかし、背景放射は宇宙齢38万年に宇宙がプラズマ状態から抜け出し、晴れ上がった時に、それまで飛び出せなかった光が一斉に宇宙に飛び出した痕跡だったのです。温度が3000K度に下がって、プラズマ状態から水素原子が形成された時になります。背景放射の温度は約3kですから、そのころから宇宙は1000倍に広がったのです。
画像 宇宙プラズマ状態
 

宇宙の形
宇宙マイクロ波背景放射は実に平坦です。これは宇宙が平坦である証拠になります。背景放射以前にインフレーションが起こり、宇宙が平坦になったと言えます。インフレーションが起こったことのひとつの証拠といえそうです。
このように平坦なのですが、わずかな温度ムラが検出されました。これが将来の銀河や宇宙の大規模構造になってくるのです。
画像 宇宙の三態形
 

プラズマ流体
インフレーションから宇宙の晴れ上がりまでの38万年間、光と物質が互いに散乱しあって全体として一つの流体のようにふるまっていた。インフレーションの痕跡がこの流体にゆらぎを与えていたと考えられます。これはキャッチできていますのでインフレーションの根拠の一つになっています。
プラズマ流体 
 

量子ゆらぎ
インフレーションの最中に量子ゆらぎ(振動)が何度か起こっています。最初の量子ゆらぎは大きく、後になってできた量子ゆらぎは小さいのです。インフレーションの写真にはそのような量子ゆらぎが幾くつも重なった模様をつくっています。
量子ゆらぎ 
 

トンネル効果
 量子力学は、この世の全ての物には、粒子と波の二つの性質を合わせ持つものと考えます。  ある高さの壁があり、壁の向こう側にボールを投げ込むことを考えてみます。つまり、最低でも壁の頂上まで届く速さでボールを投げなくてはいけません。その速さを下回る速度のボールは壁に跳ね返されてしまい、絶対に向こう側には行けないということです。
 一方で、量子力学によれば、ボールが波のように振る舞うことで、壁を超える速さに満たないボールでも壁の向こう側に「すり抜ける」ことがあります。これは、まるでボールが壁に穴を開けて向こう側に行ったように見えることから、「トンネル効果」と呼ばれています。
画像 トンネル効果
 

観測史上“最も遠い”銀河候補を発見
 135億光年先の天体を観測か  東京大学宇宙線研究所などの国際研究チームは令4年4月7日、135億光年先の宇宙に存在する銀河の候補「HD1」を発見したと発表した。これまでに見つかっていた最遠方の銀河は134億光年先にあったが、HD1はそれよりも1億光年遠く、1億年古い特徴を持つという。
 研究チームは、すばる望遠鏡など4種類の地上望遠鏡による、合計1200時間以上の観測によって得た70万個以上の天体データを分析し、HD1を発見した。  実際にHD1を発見した播金優一助教は「銀河の探索条件を変えながら何度も画像データを調べ上げて、数カ月かけてやっとHD1に出会うことができた。HD1の色は赤く、135億年前の銀河の予想される特徴と驚くほどよく一致しており、見つけた時には少し鳥肌が立った」とコメントしている。
画像 HD1 若い銀河は若い星でできているので、色は青白いのですが、遠い銀河ほどものすごい速度で遠ざかっているので、赤方偏移をするので、赤く見えています。
 

輪廻する宇宙
横山順一著『輪廻する宇宙』あら
 宇宙の終末の姿としてビッグリップがあります。徹底的に加速膨張をした宇宙は銀河や星々だけではなく原子や素粒子までも全て引き裂かれて、残ったモノはダークエネルギー(空間のエネルギー)だけになります。薄いダークエネルギーで満たされた巨大な宇宙は、量子力学的現象のトンネル効果で、極めて濃いダークエネルギーを持つ小さい空間に転移します。この状態は出来たばかりの宇宙の姿と同じです。また新しい宇宙の歴史がはじまるということです。
画像 輪廻する宇宙
 

共形循環宇宙
共形循環宇宙 ペンローズ 『ねじれた四次元』竹内薫
 宇宙の年齢が10の100乗年になった頃、加速膨張して来た宇宙に残っていた最後のブラックホールが蒸発してしまい、宇宙には重さのない光子と重力子のみが飛び交っている広大な世界になっています。光子と重力子だけの世界とは、時間の無い世界といえます。光速で飛ぶことは時間が経過しないからです。時間が無い世界ですから、空間も消滅した世界と言えるでしょう。これは宇宙が誕生する瞬間と同じ状態です。宇宙の終わりは宇宙の開始ということです。これが、ノーベル賞学者のペンローズさんの宇宙論です。
画像 共形循環宇宙
 

ホーキングポイント
 ペンロ^ズ『宇宙の始まりと終わりはなずおなじなのか』竹内薫訳
 「宇宙が続いていくうちに、ブラックホールが全てを?み込んでしまったら、ある時点で“宇宙にはブラックホールだけ”という状態になってしまいます。それから(ホーキング放射によって)ブラックホールは徐々に蒸発し縮小していきます。そしてどこかの時点でブラックホールは消滅し、“ホーキング・ポイント”と名づけられた“痕跡”を残すという。
画像 ペンロ^ズ『宇宙の始まりと終わりはなずおなじなのか』
 

共形循環宇宙論
ブラックホールが消滅した宇宙は質量のない光子や重力子といった“素粒子のスープ”になるという。そしてこの状態が宇宙の終わりであり、それこそが“無”である。
 質量のない重力子や光子にとっては時間も空間もないのです  時間も空間もなくなった宇宙は急激に縮小していくのだが、究極まで縮んだところでその反動で“ビッグバン”が起こり、再び新たな宇宙が誕生するということになる。
画像 背景放射の中にブラックホール消滅の痕跡
 

続ホーキングポイント
 前の時代の宇宙でブラックホールが消滅するとその痕跡が次の宇宙のマイクロ波背景放射の中から見つかるという。現在のところ、それらしい痕跡が20個ほど見つかっているという。しかし、このくらいの数では、雑音や偶然とされ、共形循環宇宙論の照明とは言えません。20万個ほど見つかると意味のあるものとされるようです。
画像 背景放射の中にブラックホール消滅の痕跡
 

ループ量子重力理論
 原子や素粒子などの微細な物や力を扱う量子力学と、惑星や銀河などの巨大な天体を扱う相対性理論とは、?み合わないところがあり、それを統一したいとして、ループ量子重力理論が提唱されていますが、まだ成功していません。
 このループというのは、時空はこの糸のようなループでできている織物だとする考えのようですが、つかみにくいところがあります。時間も空間もこれらを構成する原子のようなもので出来ているとの考えで、糸は通路だとしています。
 宇宙が終末を迎えると、時間・空間を構成する原子すら崩壊して、宇宙が散ってしまうのかもしれません。
画像 ループ量子重力理論画像
 

引力から斥力へ
 ループ量子重力理論の驚くべき帰結の1つは,宇宙初期のような超高密度な状況では,重力が引力ではなく斥力に変わってしまうことだ。引っ張り込むのではなく、弾き飛ばすようになるということ。空間の原子に蓄えられるエネルギーに上限があるため,上限を超えてエネルギーが詰め込まれようとすると空間の原子は反発し,斥力が生まれるからだ。この反発的重力のために,ビッグバン特異点のように1点に集中し密度が無限大になるといったことがなくなる。アインシュタインの相対論が救われたとこになります。
画像 引力と斥力
 

斥力から引力へ
 現在の宇宙は加速膨張をしています。充満している空間のエネルギーが斥力側に働いているということです。このままですと、宇宙は大きくなりすぎて、素粒子ですら引きちぎられてしまいます。これをビッグクリップと言います。しかしこれでは宇宙は終わってしまいます。
 空間のエネルギーが一度力の方向が変わったように、こんどは斥力から引力へかわれば、空間は膨張を止め、縮小に転じます。ビッグクランチから再びビッグバンに向かうのです。
画像 ビッグクランチ
 

宇宙のエネルギー
 宇宙にあるエネルギーは当初は放射が多い時期がありました。放射優勢といいます。放射とは、物質と反物質が対消滅して光の形態をしたエネルギーとなったことを言います。  宇宙開闢4700年後、対消滅が終わって物質のエネルギーが多い時期になります。
 80億年後、ダークエネルギーが優勢の時代となり、宇宙の加速膨張が始まります。  現在のエネルギーの比率は、ダークエネルギー68%、ダークマター27%、普通の物質5%と言われています。
画像 宇宙の歴史
 

サイクリック宇宙 『サイクリック宇宙論』ポールスタインハート& ニール トゥロック著
 サイクリックシナリオによれば、銀河・恒星・生命は一番近くのビッグバンよりはるか以前から何度か繰り返し誕生し、さらに遠い未来にも幾度も誕生するものと考えています。繰り返されることで、次のビッグバが始まる時には、宇宙は自然と滑らかになっており、宇宙のインフレーションがな必要なかったと考えるシナリオです。一つの周期は一兆年以上になります。
画像 サイクリック宇宙
 

サイクリック宇宙 ビッグバン 前掲書
 サイクリックモデルでは、インフレーションモデルなどと違い、温度と密度を無限となる瞬間は存在しない。(せとう注:インフレーションモデルで無限が出てくるとは限らないと思う。)無限状態がないビッグバンは物理法則で記述でます。ビッグバン以前の宇宙ではダークエネtルギーが崩壊し、空間は平坦になり、滑らかに広がっている。
画像 ブッグクランチ
 

サイクリック宇宙 放射優勢の時代
 ビッグバンによって平坦な滑らかな放射優勢の宇宙が生成するので、インフレーション時代は必要がない。放射優勢の時代、高温プラズマの中に反物質とわずかに多い物質が生成する。宇宙が冷えてくると物質と反物質とが衝突そ対消滅を起こし、放射の海と少量の余分な物質だけが残される。ビッグバンから1/100秒後に残ったクオークが結合して陽子と中性子が生成される。そして1秒後にはヘリウムなど軽元素の原子核が生成される。 画像 対生成対消滅
 

サイクリック宇宙 物質優勢の時代
 ビッグバンから7万5千年後、物質が支配的な形態のエネルギーとなる。最初の原子はビッグバンから38万年後に形成され、宇宙はプラズマ状態から透明な状態になる。その後、物質が重力の影響で寄せ集まって銀河を形成する。約90億年続きました。
画像 宇宙の晴れ上がり
 

サイクリック宇宙 ダークエネルギー優勢の時代
 宇宙誕生から約90億年後、宇宙の膨張によって物質が希薄になってダークエネルギー優勢の時代が来ます。サイクリックモデルではダークエネルギーは重要な働くをします。ダークエネルギーが優勢になると宇宙の膨張が加速を始めます。
画像 加速膨張
 

サイクリック宇宙 収縮の時代
 サイクリックモデルの鍵はダークエネルギーが崩壊するという仮定である。おそらく1兆年後、ダークエネルギーの物理的性質が変化し、宇宙の膨張が減速から停止に転じ、そこからとても穏やかな収縮の段階が始まる。ダークエネルギーが徐々に滑らかに崩壊するという考え方の説である。現在の計測からはこの考えは導けない。
画像 ダークエネルギーのイメージ衛星
 

サイクリック宇宙 収縮の時代続
 初期宇宙のダークエネルギーは少なく、放射や物質に比べて虫できるほどである。しかし宇宙の膨張とともに放射や物質の密度が下がっていくのに対し、ダークエネルギーの密度は変わらない。やがてダークエネルギーの量が放射や物質のエネルギーを圧倒してくる。この重力的影響はせ斥力として働き、宇宙膨張を加速させる。1兆年ほどするとダークエネルギーの重力的影響が逆転し、空間は収縮に転じる。ダークエネルギーは超高圧のガスとしての性質を獲得し、空間全体を一様で等方的に広げる。
画像 膨張と収縮
 

サイクリック宇宙 ビッグクランチからビッグバンへ
 サイクリック宇宙論によれば、宇宙は収縮の末にビッグクランチを迎える。宇宙はプランク長と呼ばれる微小な長さよりも十分に小さくなることを言う。ここまで来ると高圧のダークエネルギーが高温の物質や放射に転換し、宇宙は再び膨張を始める。ビッグバンに転じるのである。高圧のダークエネルギーはインフレーションと同じように宇宙を滑らかで平坦にする。
画像 サイクリック宇宙衛星
 

加速膨張する宇宙とダークエネルギー
 最近発表された学術論文によると、あと1億年ほどで、宇宙が収縮し始めるらしいです。そもそも、私たちの宇宙は、約138億年前のビッグバン以来、現在も膨張を続けていると言われています。 しかも、過去の観測結果によって宇宙の膨張速度は、時間の経過とともに加速している可能性が高いです。この宇宙の膨張スピードを加速させる原因、つまり宇宙に膨張する方向の力を与えている存在は、「ダークエネルギー」と呼ばれています。
 このダークエネルギーは、宇宙の総質量やエネルギーの、およそ7割を占めていると見積もられています。
 ダークエネルギーは宇宙全体に浸透していると考えられていますが、未だに謎が多いです。
画像 エネルギー構成 衛星
 

クインテッセンス
 もしダークエネルギーが変化しなければ、宇宙は永遠に拡大し、膨張スピードも加速し続けると考えられます。それに対して、ダークエネルギーが一定ではないという説も、唱えられてきました。ダークエネルギーの形態の一つが、「クインテッセンス」と呼ばれています。
 このクインテッセンスは、運動エネルギーと位置エネルギーの比によって、求心的にも反発的にも働き、時間の経過とともに変化すると考えられています。
 具体的には、およそ10億年前にクインテッセンスが反発的になったため、結果として宇宙の膨張スピードが加速したと考えられてきました。
画像 クインテッセンス
 

宇宙の膨張スピード
 このように、ダークエネルギーやクインテッセンスは今だに謎だらけですが、新しい論文ではダークエネルギーがもたらす力は、弱まっていると報告されています。
 研究者たちは、過去の宇宙の膨張を観測してきた知見から、今後数十億年のダークエネルギーの変化を予測しました。  観測結果から考えると、数百万年前にダークエネルギーの急速な衰退が始まった可能性があり、ダークエネルギーの力が今後も弱まっていくと、論文では述べられています。
 では、ダークエネルギーの力が弱まり続けると、一体どうなるのでしょうか。
 研究者たちの計算によれば、今後6500万年以内に、宇宙の膨張スピードの加速が停止するそうです。
画像 宇宙の膨張スピード衛星
 

ダークマター
宇宙の主役、ダークマター目には見えないけれど、確かにそこにある謎の存在です。光や電波も発することがないため、現在の私たちの観測手法では直接検出することができませんが、ダークマターが持つ質量によって引き起こされるいくつかの現象を通じてその存在が推測されています。例えば、渦巻銀河では明るさから計算される質量より、星々が銀河中を運動する速度から求めた質量のほうがはるかに大きいことが知られています。また、銀河団の質量は、構成する各銀河の明るさから推定される質量よりも、各銀河の運動から求めた質量のほうがずっと大きいことも分かっています。宇宙において、ダークマターは私たちがふだん目にする物質よりもはるかに重要な役割を担っているのです。重力だけに反応する物質ですから、プラズマ状態の中でも自分たちだけはじりじり凝集していたのです。
画像 ダークマター
 

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ダークマターのない銀河
  幽霊の様な物質「ダークマター」(暗黒物質)と銀河は切っても切れない関係にあります。それはダークマターが銀河の形成に重要な役割を果たしていると考えられているからです。
 オランダの研究者を中心とする国際的な天文学者チームは、最新鋭の望遠鏡を用いて40時間に及ぶ詳細な観測を行ったにもかかわらず、銀河「AGC114905」にダークマターの痕跡を発見することができませんでした。この観測結果はダークマターのない銀河の存在を強く証拠付けるものです。
画像 ダークマターのない銀河衛星
 

16世紀のイタリアの物理学者
 天文学は、古くから人の眼で見ることができる光(可視光)を頼りに行う可視光観測によって発展してきました。天文学の父として有名なガリレオ・ガリレイが天体観測のために作成した望遠鏡に始まり、可視光で宇宙をよりよく見るために生み出された天体観測の手段ですが、宇宙は広大で常に霧がかかったような状態であるため、いくら望遠鏡の精度を上げても、可視光での観測には限界があります。
ガリレオ・ガリレイ
 

マルチメッセンジャー天文学
 20世紀に入り、その天文学の形が大きく進化しました。可視光以外の手段で観測する新しい実験装置が開発され、X線や電波といった可視光以外の電磁波による観測が可能になりました。さらには、少し前までは存在をみつけることが難しいと考えられてきたニュートリノ、重力波といった電磁波以外のメッセンジャーを用いた天文学も発展して来ています。

電磁波     波長          用途
マイクロ波   10cm        電子レンジ
赤外線    10μm〜1μm   ヒーター  1μm=1/1000mm
可視光線 700nm〜360nm   人間の目 1nm=0.000001mm
紫外線   100nm〜100nm   殺菌
X線      10nm         透視
ガンマ線   10pm        脳腫瘍除去 1pm=0.001nm

 電磁波や重力波、ニュートリノ、宇宙線は、それぞれ異なる発生メカニズムを持っているため、様々な天文観測チャンネルの観測データを組み合わせ、時刻と到来方向の相関をとることで、ニュートリノ放射源天体の同定が可能となります。 これらの様々な「メッセンジャー」が持つ情報を連携させ異なる観測対象を持つ観測施設が協調し、宇宙の謎を解明することを目指す天文学を「マルチメッセンジャー天文学」といいます。
画像 マルチメッセンジャー天文学衛星