玉依媛 巫女 祖 祖の妹 釆女 歌垣 遊女

T 巫女 ふじょ みこ 霊界と交流できる異常な能力を持つ、職能的な呪術師

巫女
エクスタシー(脱魂) 巫女の魂が自由に宿り場(肉体)を遊離すること。
ポゼション(憑依)  神や神霊がその肉体を支配下に」置くこと。

玉依媛

神武の母 海神の娘豊玉媛の妹玉依媛が鵜芽葺不合命を育て、その後結婚した。

神武の后 大物主と、三島溝咋の娘の勢夜陀多良比売との間の娘の比売多々良伊須気余理比売

大田田根子 大物主神が陶津耳命の娘の活玉依毘売を娶して生める子

賀茂御祖下社 賀茂建角身命、丹波の神伊可古夜日女にみ娶ひて生ませる子、玉依日子、玉依日売。
玉依日売、石川の瀬見の小川で川遊びせし時、丹塗矢、川上より流れ下りき。すなわち取りて、床の辺に挿して置き、遂に孕みて男子を生みき。・・・別雷神。矢は火雷神。

赤留比売 神を現す女。赤留比売(祀る巫女)を求めて天日矛が追って来る。祀られないと神ではない。

市杵島比売 宗像三女神の一柱。松尾大社の神、大山咋神を祀るために勧請された神。

信仰のルーツは泉。これが人格化されて水神が生まれた。この神に仕えた女性が玉依姫。
水辺に奉祀し、神婚によって神の子を生む巫女。棚機津女。
水辺にいるとは、水、炊、酒など神餞調整の役割を持つ。

U 氏族の 祖 祖の妹 を 娶った天皇・皇子 宗教権の集中化で大王支配強化

神武 日向 阿多の小椅君の妹 阿比良比売  ●阿多の豪族、後の薩摩君。  

綏靖 師木縣主の祖 河俣毘売  ●祭司者的機能をそなえた地方首長。

懿徳 師木縣主の祖 賦登麻和訶恵志泥命 またの名 飯日比売命

孝昭 尾張連の祖 奧津余曽の妹 余曽多本毘売命  ●尾張国造、熱田神宮の神主。

孝元 穂積臣等の祖 内色許男命の妹 内色許売命  ●物部と同族、宮廷祭祀の要職。

比古布都押之信命  木国造の祖 宇豆比古の妹 山下影日売  ●木国国造。
比古布都押之信命  尾張連等の祖 意富那毘の妹 葛城の高千那毘売

開化 丸邇臣の祖 日子国意祁都命の妹 意祁都比売命  ●王権の忠実な協力者。

崇神 尾張連の祖 意富阿麻比売     ●国家的祭祀の確立の時代

倭武命 尾張国造の祖 美夜受比売 (『熱田神宮縁起』 尾張連之祖 建伊陀宿禰 の 兄妹)

大和王権成立の初期に王権とかかわる強大氏族(師木縣主、丸邇臣 吉備氏)が目立つ。
宗教性の強い氏族(尾張連 木国造 穂積臣)が目立つ。
祖である比売、祖の妹は、ヒメヒコ制での重要な役割、このヒメが召されるとヒコの権限が強くなる。
地方の祭祀者であった妹を召し上げることで、祭祀権を中央に集中していく。王権支配の確立の手段。

嫡妻(皇后)の出自   
    嫡妻(皇后) 天皇の皇女 皇族の娘 豪族の娘 その他  女帝

神武開化   9代      0     2     7     0     0    @   天皇は全て皇后腹
崇神允恭   10代      0     6     1     3     0    A   天皇は全て皇后腹
安康持統   20代     11    3     0    3     3    B
文武桓武   8代      1    0     2    2     3    C
 その他:皇后をたてず、妻なし、出自不明。
@ 瓊々杵尊以降は山神や海神の娘、国津神の娘を娶る天父地母の神婚、それが国津神の後裔としての諸豪族の娘に引き継がれたとの物語りの形成であった。
A 崇神朝に神祇制度確立、もはや皇后は豪族の娘である必要はない。@からBへの移行。
B 大王の超越的権威の確立の時期で、血統の尊貴性を盾に皇統の独占を目指した。
C 藤原氏の外戚政策。

V 釆女についての記事 雄略朝以降の制度。地方の最高の巫女。 妹なる皇妃の制度化。
              ひめとねたち
仁徳40年 釆女磐坂媛 新嘗の宴に内外命婦等と共に侍す。良き玉を持つ。

履中前紀 大和直吾子籠妹日之媛 住吉仲皇子の謀反に加担した吾子籠が妹を献上する。             

允恭5年7月 小墾田釆女 天皇に近侍し、玉田宿禰が鎧武装しているのを見て叛意を探る。

允恭42年11 釆女 畝傍山を愛でた新羅人の言葉の訛りがもとで釆女との姦通を疑われるが辛くも罪を免れる。
 「うねめはや みみはや」釆女と通(たわ)けたと思われた。

雄略1年3月 春日和珥臣深目女童君 天皇の一夜の召しでみごもり操を疑われるが、女子の歩く姿が天皇に似ているので疑いが晴れて妃となる。一宵に幾たび喚しや? 七廻。 英雄好色。スタミナ男。

雄略2年7月 百済池津媛 天皇のお召しにもかかわらず石川盾に通じ焚刑。

雄略2年10月 倭釆女日媛 天皇遊猟に出るも群臣の愚鈍に怒るも日媛で鎮まる。
 皇太后と皇后が美人で有名な日媛を奉じる。

雄略9年2月 釆女 胸方奉祀に派遣された凡河内直香賜が同行の釆女を犯し、斬罪に処せられる。
 神域で将に祭ろうとする時に犯した。多分全裸姿。

雄略9年3月 吉備上道釆女大海 新羅討伐の大将軍紀小弓宿禰の出陣時、吉備大海を与えられる。

雄略12年10月 伊勢釆女 高楼を走る木工闘鶏御田の敏捷な姿に驚いて倒れたのを姦通と疑われ、御田が死罪に問われるが秦酒公の歌により救われる。

雄略13年3月 釆女山辺小嶋子 歯田根命が小嶋子を奸すも、馬太刀を以て罪を祓除い許される。

雄略13年9月 釆女 木工韋那部真根、フンドシ姿の釆女の相撲に気をとられ、細工の手を誤り、死罪に処せられる所を傍輩の歌により救われる。

雄略記 伊勢三重釆女 新嘗祭に侍して粗忽の咎で死罪になる所、天語歌を捧げて免。槻の葉が盃に落ちた。
きこゆ
安閑1年閏12月 廬城部連枳呂喩女幡媛 幡媛の盗みの罪を償うため枳呂喩が媛を釆女丁として春日皇后に献上。
 釆女丁は釆女に使用される女。
敏達4年1月 釆女伊勢大鹿首小熊女菟名子夫人 敏達帝との間に太姫皇女・糠手姫皇女を生む。

舒明前紀 釆女等、栗隈釆女黒女、八口釆女鮪女 危篤の推古帝の枕頭に近侍。

舒明2年1月 蚊屋釆女 舒明帝との間に蚊屋皇子を生む。

舒明8年3月 釆女 釆女を奸せる者を悉く糾弾し罪に処す。

孝徳大化2年5月 詔令発布 釆女貢上に関する詔。郡少領以上の姉妹・子女を貢上のこと。

天智7年2月 伊賀釆女宅子娘 天智帝との間に伊賀皇子(大友)を生む。

天智万葉95 鎌足が釆女安見児を得る 吾(あ)はもや安見児得たり皆人の得かてにすとふ安見児得たり

天武11年3月 詔令発布 服制の改正、膳夫・釆女の手襁(たすき)・肩巾(ひれ)を禁ず。
 呪術的役割をはずし、律令的官人組織に組み入れる。

万葉507 駿河采女 敷細(しきたへ)の枕ゆ漏(くく)る涙にそ浮寝をしける恋の繁きに
やわらかな枕からこぼれおちる涙が溢れて、私は水に浮かぶ思いで寝ていることよ。絶えぬ恋いの苦しさで。
         おやかぬしめ
称徳4年6月 常陸国筑波郡釆女小家主女、上野国佐位郡釆女朝臣老刀自 本国の国造に任じられた。

釆女

天子の食膳を司り、神および現神(天皇)に仕える巫女。 鎌倉期に消滅
貢いだ国々の至上神に仕える最高の巫女、その資格を持った女子。現神が豪族神の上。
大化の改新以降は釆女の役割が徐々に変わってきている。祭祀権の集約から女官へ。
猿沢池 釆女が入水して龍と化し、やがて弁才天に昇華するとされる。(大東氏)

神妻

釆女は神妻でありその神聖さゆえに俗人による穢れも斥けられねばならない。
釆女の奸しに関する話は多い。それでも釆女は罰せられていない。
釆女を奸した罪は祓除(はらえ)によって償われる。神の怒りへの贖罪の方法。
一夜婚 釆女は現神に率寝られて御子を生む神妻であった。一夜のお召しでみごもった。

一夜婚の例

瓊々尊と木花咲夜姫    神武天皇と伊須気余理比売(古事記)
誉津別命と肥長比売    エスキモーの妻や娘と客人      歌垣    遊女

W 難波の歌垣

歌垣の発生 八世紀に飢饉は130件も起こっている。旱魃、洪水、疫病、害虫などいつ何時餓えが人々を襲うか、古代の人々は常に死の恐怖に向かい合っていた。その逆に収穫を得た喜びは爆発した。宴には活力の旺盛な若者達が大地の生産力を高めるべく、野外での性の解放に及んだ。これが定期的に繰り返されて、やがて男女による歌の掛け合いになっていった。 → 盆踊り ダンジリ祭など祭り 合コン

2951万葉 海石榴市(つばいち)の八十(やそ)の衢(ちまた)に立ち平(なら)し結びし紐を解かまく惜しも
 海石榴市の八十の衢にいつも出かけて あの人と結んだ紐をそうそう解かないは。(中西進氏)
 海石榴市の八十の衢で誘われて紐を解いて、終わってから結んだのに、また誘われて、紐を解くのももどかしいは。
山背大兄 オバヤシニ ワレヲヒキイレ セシヒトノ オモテモシラズ イエモシラズモ

三大歌垣

筑波嶺に登りてかがひする日(とき)よめる歌一首、また短歌
万葉1759 鷲の住む 筑波の山の 裳羽服津(もはきつ)の その津の上に 率(あども)ひて 未通女
(をとめ)壮士(をとこ)の 行き集ひ かがふかがひに 人妻に 吾(あれ)も交(あ)はむ 吾(あ)
が妻に 人も言問へ この山を うしはく神の 古(いにしへ)よ 禁(いさ)めぬわざぞ 今日
のみは めぐしもな見そ 事も咎むな
他人の妻に私も交わろう、わが妻に他人も声をかけよ。この山の神は禁じていないよ。

『肥前国風土記』 杵島の県。南方に一つの離れ山がある。坤にあるのが比古神、中に比売神、艮には御子神。村々の男女は酒を携え、琴を抱き、毎年春秋に手を取りあって登り見渡し、酒を飲んで歌舞し、曲が終わって帰る。 坤ヒツジサル南西
稲佐神社 祭神 天神(素盞嗚尊)、女神(櫛稲田姫)、五十猛神 式外社。大同二(807)年創祀。
をもと
『摂津国風土記』 雄供の郡。波比具利岡。この岡の西に歌垣山がある。昔、男や女たちがこの
上に集まり昇っていつも歌垣をした。それによって名とした。 麻具波比の岡?

会賀の市

『続日本紀』 宝亀元年(770)称徳天皇の時 三月二八日 葛井・船・・六氏の男女230人が歌垣 に奉祀した。その服はそれぞれ青摺り染めの細布の衣を着て、紅の長い紐を垂らしている。
男女が相並んで列を分け、緩やかに進んで次のように歌った。
  乙女らに 男立ち添い 踏みならす 西の都は 万世の宮 (由義の宮)

『顕宗紀』顕宗の家誉めの歌の一部 「この手造りの旨い酒は、餌香の市でも値段をつけても買うことができない。」良い香りの酒を売っていた市ーエガー

刑罰 歯田根命が釆女と通じたので、罰として資財を餌香市の橘の木のもとに置かせた。

『養老獄令』 「死刑は市で執行せよ。」とある。死刑だけではなく、杖で打つ刑も行われた。

会賀の市はどこか

藤井寺市近辺

古市 奈良時代にも餌香市は存在、古市とは云わないだろう。
恵我 水運に不便。
船橋 国府も近い場所に置かれた。水陸便利。由義宮にも近い。


1742万葉歌 河内(かふち)の大橋を独りゆく娘子を見てよめる歌一首、また短歌
しな照る 片足羽川(かたあすはがは)の さ丹塗りの 大橋の上(へ)よ 紅の 赤裳裾引き
山藍(やまゐ)もち 摺(す)れる衣(きぬ)着て ただ独り い渡らす子は 若草の
夫かあるらむ 橿の実の 独りか寝(ぬ)らむ 問はまくの 欲しき我妹が 家の知らなく
若草の夫がいるのだろうか、それとも橿の実のように一人で寝ているのだろうか。
1743反し歌 大橋の頭(つめ)に家あらばま悲しく独りゆく子に宿貸さましを

Y 市と市神
チマタ
人間の股に通じる。境の神は性器神。
境界 坂、橋、河原、中州、津、渡し、港。

夕暮れのチマタ
言霊などの精霊 魑魅魍魎 が動く。

チマタの祭り
道饗祭 鎮火祭、疫神祭、夕占

道饗祭 魑魅の侵入を防ぐ。
鎮火祭 火災を防ぐ。
疫神祭 悪疫の流行を防ぐ。
夕占 通行人の言葉の内容

瓢箪山稲荷神社   辻占

1.神前に願い事をよく祈る。
2.おみくじをひく。番号がある。
3.東参道入り口の占場で気を鎮めて占場石を中心に正面を向く。  通行人の姿、年齢、持ち物、言葉、葉来物、連れの有無等を詳しく観察する。
 おみくじの番号1番 最初の人(連れ)
 おみくじの番号2番 二人目の人(連れ)
 おみくじの番号3番 三人目の人(連れ)
 左右どちらから来てもいい。
4.社務所に戻りことの次第を申し出る。 金3、000円から。

3469 夕占(ゆふけ)にも今宵と告(の)らろ我が夫汝(せな)はあぜそも今宵依(よし)ろ来まさぬ
 夕占にも「今夜」と告げられたのに、ええ、わが背はどうして今夜いらっしゃらないの。

餌香市 橘の木 0125 橘の蔭踏む路の八衢(やちまた)に物をそ思ふ妹に逢はずて
 橘の木陰を踏む道の四方八方にわかれるように、あれこれ物思いするよ。妻にあうこともなくて。(病臥する作者)

資本論の市 商品交換は各共同体の尽きる処に、換言すれば各共同体が他の共同体またはその成員達と接触する点に始まる。 無主荒野

市神 自然石であった。境界石(道祖神、塞の神)→市杵島姫、蛭子神、大国主命
境界石→地蔵

X 神になった遊女 松浦佐用姫

大伴狭手彦連が船出して任那に渡った時、弟日姫子は褶振峯に登って肩布をもって振りながら別れを惜しんだ。
風土記  狭手彦が去った後、よく似た人が夜毎に来て女とともに寝て、暁になると帰って行った。弟日姫子が後をつけると峯の沼のほとりに寝ている蛇があった。沼底の遺体は弟日姫子。
田島神社伝  高根に登りて 領巾を振りつつ 慕い嘆きしが 遂に石になった。

万葉871 遠つ人松浦佐用姫夫恋(つまこひ)に領巾振りしより負へる山の名    松と待つをかけている。
万葉874 海原(うなはら)の沖行く船を帰れとか領巾振らしけむ松浦佐用姫
万葉875 ゆく船を振り留みかね如何ばかり恋(こほ)しくありけむ松浦佐用姫

肥前国 松浦郡 田島神社摂社佐與姫神社、佐代姫神社2社、高来郡 八幡神社摂社佐用神社、温泉神社

Y 天照大神
天孫降臨神話の主宰神はタカミムスヒ神だったが、天武編纂の古事記でアマテラスに切替。中臣対忌部もある。
しかし延喜式月次祭の祝詞はカミムスビ・タカミムスビが筆頭に登場し、天照大神はない。
更級日記の著者(菅原孝標女)が三十歳近くになるまでアマテラスを知らなかった。 どこにいます? 神か仏か?


文献
倉塚曄子『巫女の文化』 義江明子『日本古代の祭祀と女性』 高橋統一『聖なる王/巫女/神話』

宇賀網史話

神奈備にようこそ