一 白峯−崇徳上皇の怨霊 讃岐国白峯にある崇徳上皇の御陵に参詣した西行の前に、大魔王の姿となった上皇の怨霊が現れ、西行は成仏得脱を説くが、怨霊は聞かず、予言した通りの源平の戦いが起こる。
聖護院積善院準提堂内の崇徳地蔵は人喰い地蔵と呼ばれた。ストクインが訛ってヒトクイインと恐れられたのは崇徳上皇の呪いの凄ましさを象徴するお話。 人間はしたたかであり、京の人々は無病息災の守りとして親しんできた。
崇徳地蔵
二 菊花の約−死んで果たす約
播磨国加古に支部左門なる者が住んでいた。そこへ近江から出雲へ帰る途中の赤穴宗右衛門が急性の病をえたのを手厚く看病して、快復させた。二人は語り合っている内に意気投合して、義兄弟となった。 しばらくして赤穴は重陽の節句に戻って来ることを約して出雲へ向かった。約束の日になっても赤穴は帰ってこない、左門は待ちわびて夜になってしまった。あきらめきれぬまま戸を閉めようとした所へ赤穴は帰って来た。話によると、冨田城主尼子経久が赤穴を臣下にしようとし、いとこの丹治に命じて城外に出さないので、やもうえず自害して亡霊となって帰ってきたという。亡霊はやがて姿を消した。 左門は出雲に向かい、丹治を討った。
挿し絵 勝四郎と翁
四 夢応の鯉魚−鯉になった興義
三井寺の興義という僧が漁夫から鯉を買っては琵琶湖に放し、その様子を絵に描き、名画と称えられた。しかし興義が亡くなってしまったので。ただ胸の辺りが少し温かいので、葬らずにいた。三日目に目がさめ、、「苦しさのあまり熱をさまそうと湖で泳いでいた。放生の功徳で金色の鯉となって泳いでいたが、空腹でつりの餌にくいつき地理あげられてしまった。料理されて気が付いた。」と云われた。
高野山
六 吉備津の釜−残ったもとどり
吉備国の正太郎は吉備津神社の神主の娘磯良を娶る。その時神社の釜で吉凶を占うと凶と出た。しかし結納も済ましたことだしそのまま結婚した。妻を迎えても素行のおさまらない正太郎は袖と云う遊女を身請けする。父は磯良の嘆きを見かねて正太郎を監禁した。正太郎は磯良に、「袖を都へやってしまうから費用を用立てくれ。」と頼む。磯良は喜んで用だてるが、正太郎はその金を持って、袖とともに逃げ出す。播磨国に袖の従兄弟がいたのでそこへ身を寄せるが、袖は病気にかかり死んでしまう。 袖の墓参りに行った際、磯良の代参の女に伴われて変わり果てた磯良に出会う。すざましい恨み言を聞く。やがて、正太郎のもとどりだけが血をしたたらせて残る。
三輪が崎